葉状腫瘍について

葉状腫瘍の治療等について、主にアメリカで公開されたリポートを紹介しています。togetter → [葉状腫瘍 境界悪性]治療と予後について:主にアメリカの文献から https://togetter.com/li/1338691

近況(3)

2019.5.27.退院

 

当初2週間という余裕をみての入院予定も術後の回復が順調で入院6日での退院となった(これは主治医からも言われていた通り)。

術後の胸の痛みは一日も経てばだいぶ楽になり、また「7・8cm切除した」という右胸も思っていたよりも残っており、傷口も本当にきれい。

前回腫瘍を切除した時もとてもきれいに縫っていただいていて、主治医は本当に素晴らしく腕が良い!のだろうと思った。

放射線療法については、腫瘍があった部分を全く触れずに厚く切除したので「ナシ」の方向で考えられているとのことだった。それについては(外科的切除以外)ガイドラインがない葉状腫瘍の治療に私は不安ばかり抱いている。再発はやはり怖い。できるならば放射線を当てて念には念を入れ(周辺のどこかに存在している"かも"しれない)芽を潰してしまいたい…が、そこは先生のお考えがあるのだろう。主治医が下さった論文もまだ全てを読み込むことができていないので、時間がある今のうちにしっかり読んでおこうと思う。これはプロである主治医を信頼していないのではなく、ガイドラインがなく予測不可能な振る舞いをするこの病の「再発」をできるだけ避けたいからに過ぎないのだけど、主治医は気分を害さないだろうか…など、いろいろ考えてしまった。が、仕方ない、とも…。病気は、特にこのようにデータも少なくガイドラインもほとんど存在しない病気は、人を不安にさせる。主治医にもそうした心境下での自分の希望を後悔のないように明確に伝えておきたいと思う。そして、私は主治医ならばそうした私の希望にも(実行するしないに関わらず、まず)耳を傾けてくれるのではないかと感じている。(期待している?)

 

その後、知人が紹介してくれた元国立がんセンター乳腺外科の先生と電話でお話をすることができた。

その先生のご意見としては、

 

*葉状腫瘍は切除以外はガイドラインがない 

放射線療法についてはまだ意見が分かれている

*そこまで切除したならば、放射線を当てるリスク(副作用)等を考慮すると主治医の先生に従って経過観察を(特に2年間)しっかりすれば良いのでは

 

ということだった。

ちなみに、当初私が希望した全摘もこちらの先生は賛成であり、一方で主治医はそれはいくらなんでも乱暴すぎるのでは?というお考えだった。

それだけ意見が分かれる病気なのだと思った。

 

また、悪性葉状腫瘍の乳房切除術後の抗がん剤治療についても尋ねたところ、

 

*腫瘍の悪性度によっては再発しやすい

*再発発覚と同時に転移していた場合進行が早く手が打てないため、事前に抗がん剤治療を選択することもあるのではないか

 

と。

 

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ここからは葉状腫瘍ではなく、入院中同室であったおばあちゃんのことを。

7年前に見つかった乳がんが全身に転移をして、私が入院をした時は胸水を抜き始めた頃だった。毎晩痛がって呻くおばあちゃんの声を聞きながら、私は20年前に脳梗塞で倒れ、その後亡くなった自分の祖母のことを思い出していた。当時はまだ自分も若く、祖母に対しては何もしてあげられなかったという後悔があり、そんな後悔は二度としたくないと思っていた私は夜中に呻くおばあちゃんの元へいき、声をかけ、背中をさすることにした。おばあちゃんはもはや食べることもできず、前日は5Lも胸水を抜いた後だった。冷たい手を握りながら背中をさするとおばあちゃんは、

「気持ちいいよ、本当に気持ちいい」

と、体はとんでもなくつらいだろうに、にっこりと笑ってくれた。

おばあちゃんは横になることもできない。

「また明日の朝、肩を揉みにくるからね」

というと、嬉しそうに、

「ありがとうね」

と言ってくれた。

2日間だけだったけれど、おばあちゃんの背中をさすったのは日中・夜中を含めて何回かは覚えていない。

私はおばあちゃんの手を握りながら片方の手で背中をさすり、もしかしたら最期の時というのはこうした時間も大切なのかもしれないと考えていた。

「本当に極楽だよ」

と、笑顔をみせてくれるおばあちゃん。

 

私が退院をする時におばあちゃんが、

「せっかく友達になれたのに寂しいね。でもおめでとう!また会おうね」

と言ってくれた。

私は手を握りながら

「たくさんお祈りをするからね。また会おうね」

とお別れをした。

悲しいけれども、おばあちゃんとは肉体を通しての再会はないと思う。私の肉体が滅びる時、それがおばあちゃんとの再会の時となるのだろう。

 

"たとい、死の陰の谷を歩くことがあっても、私はわざわいを恐れません。あなたが私とともにおられますから。あなたのむちとあなたの杖、それが私の慰めです。
私の敵の前で、あなたは私のために食事をととのえ、私の頭に油をそそいでくださいます。私の杯は、あふれています。"
詩篇 23篇4~5節